いざ行きたいんだ 今すぐ君の材中のもと
とある虫に対し、常日頃から連綿と気色悪い感情を抱き続けることは虫屋なら誰しも経験したことがあると思う。
かくいうぼくも、去年の末くらいからずっととあるゴミダマのことを考えている。
それは――――キイロチビゴミムシダマシ属 Enanea。
キイロチビゴミムシダマシ属は4種を擁する日本固有属で、それぞれ
ルイスキイロチビゴミムシダマシ(九州) E. testacea
ヤクシマキイロチビゴミムシダマシ(屋久島) E. yakushimana
オニツノキイロチビゴミムシダマシ(奄美) E. chujoi
オキナワキイロチビゴミムシダマシ(沖縄本島) E. nakandakarii
加えて九州本土に1未記載種が存在する。
かつてはすべてが幻と謳われていたが、現在は冬季に材中で越冬することが分かり、ぼくのような凡人でも手が出せる属となっている。
大図鑑ではすべて星5だが、実際星5に値するのは未記載だけか、あるいはそれとヤクシマぐらいではなかろうか。
もちろんこれらをコンプしたいのだけど、上記の島々を巡るのははっきり言ってめんどくさすぎる。
しかし来年の冬には引っ越している可能性が高いので、無理をしてでも今年度中にコンプを目指すことにした。
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気の遠くなるような時間を移動に費やし、ようやく奄美に到着した。学部4年以来となるので、かなり久々だ。
天気は雨の合間の曇り、条件は悪くない。
朝8時になりさっそく車を借りるが、、、ここで問題が発生。
なんとレンタカーの乗り捨てができず、しかも車は18時返却らしいのだ!
奄美は翌日5時にフェリーに乗っておさらばする計画だったので、これだと採集時間が実質6時間程度しか確保できないことになってしまう……。
日中ダメでも夜通し採集したらさすがに1頭くらいは採れるでしょうと考えていただけに、これは厳しい。初っ端から暗雲立ち込めまくりだ。
とりあえずそのまま車を借りて目星をつけていた林道(このあたりがいいんじゃないかなぁ〜という非常にぼやっとしたものではあるが)に向けて車をかっ飛ばす。どうにかなるんじゃない、どうにかするのだ。
本土でのルイス修行の経験から、ある程度いる環境についてはあたりが付いている。それは、
・まず、そこそこの大きさの赤枯れ材に入る(感覚としては、かなり軟らかいツヤハダ材)
・でもマツ等の針葉樹は微妙
・したがって木が若い二次林よりも安定した材の供給がある原生林的な環境が望ましい
・ある程度の湿度を要するので林縁よりも林内がよい
奄美は林内に入れる道がそうそうないので、よさげな環境があれば適当に突っ込んでいくスタイルで行くことにした。
車を走らせているとビビッとくる場所があったので、しばし探索。
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材はいっぱいあるけど全部リュウキュウマツだ……。
1時間無駄にした。はい次。(残り5時間)
林道をずっと走る。なかなかいい環境がないな〜とうなっていると、林道の先で謎の集会をやっているではないか。
この先は行けないから引き返してね〜って言われた。なにこの時間……。
来た道を延々と戻っていると、どうやら登山道チックなものがあるらしいのでそちらに行くことに。
しかし、行けども行けどもどんどん環境が終わっていく。
しばらく進むが、とうとう我慢できなくなり結局車から一歩も降りずに引き返す。
時間がもったいね〜〜〜〜!!!!(残り4時間)
林道の途中の分岐を別方向に行き、よくわからん道を行く。すると、マジのガチの登山道があるではないか!
車を停めると、後ろからアヤシイわナンバーがやってきて登山道前で停まり、中から明らかに虫屋っぽい風貌のやつがおりてきた。
そして、そいつはこちらには気もかけず登山道をどんどん進んでいく。
うわ、競合者だったらやだな〜(いるわけねぇw)と思いつつぼくも登山道を登っていく。
すると、途中でさっきのやつが引き返してきた。そして、「何かお探しですか?」と訊いてきた。
ここで個人的な経験に基づくと、この島で虫屋であることを明かすと100%良くないことが起こる。でも嘘をつくわけにもいかないし、相手は明らかに島民ではないし……。
結構迷ったが、「昆虫です」と答えた。
そしたら相手は「昆虫?あっふーん」と言ってスタスタと去っていった。
なんなんだ。なんなんだよ!
ちなみに登山道沿いに材はありませんでした。(残り3時間)
その近くをウロウロしていると、やがて道がヤバイ林道モドキに行き当たったので、ここいらで車を降りて探索。
入れるところには……
歩いていると、斜面の上に赤枯れ材のパーツが引っかかっていた。
なんだあいつ、自己主張強いな、と思いながら斜面を登り、削る。
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で、で、、、、、、
でませんでした〜〜〜〜〜〜
しかも途中で材が道路に落ちた。
とりあえずこの材は放置して林道の奥へ。
なんか進むたびに環境が終わっていくような気がしますね。。。。
結局引き返しひたすら歩いていると、さっきの道路に落ちた材が横たわっていた。
この自己主張つよし君の残りを削る。と、!
ギョワーーーーーーーーーーーーーーー
オニツノキイロチビゴミムシダマシ E. chujoi、撃破……
ナナメから。ツノ!湾曲!!!
材のパーツと言ってもそこそこの大きさなのでざっくざくでしょうな〜と思いつつ削る。
5頭しか出ませんでした。カスかな?
この材のもともとの部分をパーツを探してひたすら急斜面を登っていくと、ありました!それらしいものが!
必死こいて削る。
2頭しか出ませんでした。クソかな?
まあ出ただけよしとしましょう。残り1時間のことでした。
町まで戻る途中でいいとこあったら寄りましょうとのことで、来た道をひたすら戻る。
途中、ビビッとくる場所があったのでしばし探索。
。。。。。
材、なし!終了!タイムアップ!
夕食は鶏飯。
採集の感想としては……赤枯れ材って意外とあんまないですね。いらんときはようけ目に付くのに。
ガソリンの消費量がやばかったです。釣り堀採集かな?
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はい、所は変わってやんばる@沖縄本島です。
ここでは採集時間を1泊2日もとっているのでなんとかなるだろ!ちまちま頑張ってきます……
まずは目をつけていた大大大本命の場所へ。
もちろん根拠はないけど、あそこならいるだろうっていうのがあるんですよ。
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赤枯れがNEEEEEEEEEEEEEEE
え、なにこれ?1ミリもないんですけど。
大本命ポイント、敗退……
次に行くのは次に可能性高いかな?ちょっと微妙かな?という場所。
いろいろやんばるらしい昆虫がたくさんいるところなので、いないってことはないと思うんだけどなぁ。
ここはド登山道なので、がしがし登っていく。
するとここには赤枯れ材がそこかしこにあるではないか!
というわけでかたっぱしから割っていく……いない。
だいたいEnaneaは樹皮もないようなボロボロの材にいることが多いのでそういうものをチョイスしているのだが、これには問題点があって……
ナチュラルボーン赤枯れことリュウキュウマツと非常に紛らわしいのだ
そもそも針葉樹に入るか入らないかははっきり言って分からないんだけど、ぼくは出したことないのでハズレだと勝手に思ってます。はい。でもアラメヒラタとかは入るよな……
慣れれば材の割れ方でなんとなく識別できるんだけど、正直むずいです!
というわけでこの場所ではリュウキュウマツも多分に(というかほとんど?)割っていたと思うんだけど、やっぱり一頭も出ない。きつい……
この日は大変残念な気持ちになりながら帰りました……
2日目。
この日は同行者が行きたいと言っていた場所に行く。
話を聞く限り、乾燥しているようなのでEnaneaには厳しそうと感じ、いっそ車で寝てようかと思っていたが出歩くことに。
山道をずっと歩くのだが確かにぱさぱさ。赤枯れ材はあるんだけどぱさぱさ。でるわけねぇ。
もうどうでもよくなりそぞろに歩いていたら道端にくたびれたマツが倒れていて、ほんとうに、ほんーーーーーーーとうになんとなく樹皮をめくった。
コレ
するとコメツキ様の甲虫がポロリして、アリタムネアカでも落ちたか?でもやたら寸詰まりだな……と思ってつまみあげて、
あーーーーーーーーーー!!!!!!
クチキゴミ!!!!!!!!!!!!!!!
クチキゴミムシ。
一部で熱狂的な支持を得ているカッコイイゴミムシだ。
欲しかったんですよこれぇ。
一部始終を見ていた同行者もびっくりして、必死こいて残りの樹皮を剥いでいたが出るわけねぇ。クソみたいなマツだし
必死ですねwwって煽りを入れるのが楽しかったです。
樹皮を全部つんつるにしたが結局追加が出なかったので同行者もようやく諦めたが、よく観察すると樹皮下がボロボロに朽ちて容易に芯まで入れるようになっている。
中にもいるんじゃね?と思って材をひっぱたくとまた出たぁーーーーーーーー!!!!!!!!!!1
さっきよりでかい個体で感無量ですわ……
Enanea?知らない子ですね……
最後に大本命ポイントでもう少し探したかったので、ワガママを言って採集時間を取ってもらう。
今回は沢を登りつつ材を探す作戦だ。
間違えて革靴を履いてきている時点で装備としてはうんちだがやるしかない。
ハブも冬眠しているし。(と、このときは本気でそう思っていた)
どんどん沢を登っていくと、目論見通り赤枯れがあった。
これはもらったな……もらったな……
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出ねぇ。
終わり。