ごみだまろぐ

甲虫屋のネガティブ日記

君のホスト 寒ささえ 私にはわかるから

今回のターゲットはトゲフタオタマムシDicerca tibialis Lewis, 1892。

コイツはモミ食いで、秋に羽脱してスギの樹皮下で越冬することが知られている。


関東では割と簡単に採れるが、九州はよく知らない。たぶん少ない。


でも採集自体は単純で、

モミとスギが両方生えている場所でひたすらスギの樹皮をはがせばいいのだ。


特に九州においてはそもそもモミが自生している場所なんてもう多くないから、場所選定を間違うなんてことはそうそうないだろう。



しかし……





2年前は採れなかったんだよなあ。



先述した通り、場所選びを間違えているとはあまり思えなかった(そもそも選んだのはぼくじゃないが)。


だとすると数がよっっっぽど少ないんだろう。あああ、もっと丹念に探せばよかったなあ……いやでも必死こいて探したよなあ……。気が遠くなるほど探したしなあ……。


そんなことをずっと考えていたが、最終的に「あの時は気合が足りなかったんだ」と思うようになった。

なら、もう一回行くしかあるめぇ。

後輩2人を引き連れて行ってきた。


ぼくは「採れるか分からん」としきりに言ったが、採集がド下手な人間の言うことなんて信用していないみたいだった。君ら、地獄を見るぞ。

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朝イチから車をビューンビューンと走らせ、ようやくポイントへ。


照葉樹林の中にモミとスギが点在するような場所。


はやる心を落ち着かせ、さっそくスギ……じゃなくて道路脇に転がってるアカマツ材のもとへ。

なんでアカマツ


今回は保険を用意しておいたのだ。


新鮮なマツ材の樹皮下ではホンドニセハイイロハナカミキリRhagium femorale N.Ohbayashi, 1994というカミキリが越冬しているのだ。

これも本州では普通種だけど、九州では得難い種らしい。

さっそくベロォ!してみる。


一発で出た。カメラを出すのに手こずってだいぶ元気になってしまった。


後輩たちが苦戦している間にどんどん追加していく。


当たり前だ。



後輩がぼくより虫を採るとか許せないだろ!!!!!!

まあ、いっぱいいるんですけどね。


材の裏側まで丹念に剥いでいく。

ドンドン出てくる。九州では得難いんじゃなかったの……?


後輩たちも一通り採れたみたいだから、いよいよ本番のトゲフタオ探しを開始する。

前回ありえんくらい苦戦したから、あんまり乗り気じゃなかったのはここだけの秘密だ。


ベリッ。うーん。





ベリッ。

やっぱり出ないな……。






ベリッ。

ベリッ。



気が狂いそうだ。



前回の悪夢がよみがえる。

ベリッ。


ベリッ。






ベリベリッ。

あっ、2枚も剥いじゃった。






樹皮に虫はさまってるやんけ!!!!!

腹端しか見えないけどカメムシぽいな。ああ、くさ。

一応ひっくり返すか……。

















あ、


























あああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



採れちゃったよ……という気持ちと、やったぜ!!!!!!!!という気持ちと、マジか……という気持ちでごっちゃになってよく分からないことになったが、とりあえず「よっしゃあああああああああああ!!!!!!!!出たあああああああ!!!!!!!!!!!!!!」

と叫んでおいた。


これがご神木。たぶん手が震えてたんじゃないかな。


樹皮に乗せて撮影してみたけど、脚をぴんと張っているので微妙な感じ。


ひたすらスギの樹皮を剥ぐのは全然おもしろくないしつらい。特にいるんだかいないんだか分からない地域でこれをやるのは苦行でしかない。


だが、いた。



一同気合が入る。


でもやることはひたすらベリベリするだけなんですけど。


ベリ。



ベリ。



ベリ。




ベリ。


うん。出ないな。場所変えよう。


良さげなところでベリ。


ベリ。



ベリ。




ベリ。






だめだな。

帰るか。

結局追加が出ないままタイムアップ。


採集地一帯を荒らしまわったが、1頭しか出ないのは厳しすぎた。



今回は、幸運だった。