雲間に霞む光はまだ春めいて
遠い九州ではもう気が早い虫がぽんぽん出ているという.
でも本州ではまだ季節が足踏みしており,まだまだこれからという感じだ.
しかし,一介の虫屋の逸る気持ちを抑えるには,少しばかり暖かすぎた.
あなたに会いたい……ただそれだけを願い,満ちては欠ける月を数えて.
こんなに暖かいのに,まだ季節は晩春といったところ.
しかし,一部を除いてゴミダマは季節にそれほどうるさくない.そこがいいところだ.
本当にいい天気.誰もいないし.
山道をすたすた歩いていくと真新しい倒木が目につく.去年の台風で倒れたものだろう.
フラスは出ていないが,何かいそうなので一シバき入れてやった.
ホソオオクチキムシ Upinella cryptomeriae (Lewis, 1895)
ちょっとイイ Upinella だ.環境がよく残されている森林ではしばしば見るが,駄物というわけでもない.
Upinella の中ではかなり好きな部類.
これもそうだ.
ここはウロのある木も結構あるのでシバきあげてやったが,あまりいいものは落ちてこなかった.
ゴミムシダマシ (クロゴミムシダマシ) Neatus picipes (Herbst, 1797)
家屋害虫としての一面もあるが,ウロからもよく落ちてくる.
乾燥気味のところが好きなのだろう.あーあ,こいつが正真正銘のウロ虫だったらな,,,といつも思う.
また,ウロからはオオチャイロハナムグリの前胸背板も発掘された.
夏が待ち遠しいな……!
林道を歩いていると細枝にハカワラタケが密生しているのを見つけた.
九州ではハカワラタケからルイスチビコブツノゴミムシダマシを採ったことがある(あれは細枝じゃなくてもっと大きい木だったが).
まぁ茨城じゃあルイスなんて絶対落ちるわけない.が,あまり虫が採れていなかったのでシバいてみた.
ぽつぽつぽつとオオコキノコムシ Mycetophagus grandis (Reitter, 1889) が落ちてくる.お,これは幸先が良いな(いいのか?)
と,オオコキノコに混ざって Byrsax が!ええ,,,マジ,,,,,,?
ルイスチビコブツノゴミムシダマシ Byrsax lewisi Akita & Masumoto, 2012
えええええええ!!!!!!!!!!!マジッすか!!!!!!!!!!!!!!!11111
落ちちゃうんすか!!!!!!!茨城で!!!!!!!!!!
絶対いないと思ってたよ!!!!!!!
ルイスは照葉樹林で,キムラは夏緑樹林と分かれていると思っていたのでイヤービックリだ.
でもこれはルイスでしょ!
ちょっとルイスにしては褐色っぽかったので,キムラだったらどうしよう...と検鏡するまで思っていたが杞憂だった.
惜しむらくはメス1頭しか落ちてこなかったことだ...オス欲しいなあ...
この後は大したものは採れずに退散.
帰り際にバカ花で Macrolagria をひとつつまんだ.
フジナガハムシダマシ Macrolagria rufobrunnea (Marseul, 1876)
まあこの時期の Macrolagria といったら...
しかし夏が楽しみだ.
次はあそこで何が採れるかな.