ごみだまろぐ

甲虫屋のネガティブ日記

朝の吹き上げで待ち伏せした 空振りも辞さないで 前編

いわずと知れた,あの亜熱帯の島.


珍なゴミダマとミーハーなカミキリを求め,7/3から7/6まで単身で乗り込んできた.




7/2(移動日)

わくわくしながら鹿児島行きの高速バスに乗車した.


ぼくが奄美に行くのは2回目であるが,1回目は採集らしい採集をしなかったように感じる.かろうじて赤いヤツはゲットできたが,現在は採集が禁止されている.

したがって今回が実質初回となる.これで採れなかったら何も言い訳はできない.


だが,残念なことに滞在中は梅雨明けしないようだ.今回は前線がうんたらで梅雨明けが遅れているのだとか…….まあ,梅雨明け直前はそんなにひどい雨に降られることもなかろう,と半分楽観的でいた.


果たして何が採れるだろうか?あのハチ似のカミキリは採れるだろうか?幾多の固有種はどれだけ採れるだろうか?赤いヤツは写真に撮れるだろうか?おそらく10頭も採れていない,珍なキマワリは運が良ければ採れるだろうか?ゴミダマは何種行くだろうか?妄想が止まらない.


今回は後輩が誰もついてこなかったが,取り分が増えるという意味ではよかったのかもしれない.


フェリーに乗船する.


今回のフェリーは,夜中うなされている人間や,デカい歯ぎしりをしている人間,でかいイビキをかいている人間などが盛りだくさんで寝るどころの騒ぎではなかった…….


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7/3(初日)

フェリーが名瀬新港に着岸し,上陸する.まだ空は暗く,雨がぱらついていた.しばらくボケっとしていると,手配していたレンタカー屋が来た.


手続きをちゃっちゃと行い,さあ採集だ!まず最初に向かったのは,吹き上げポイントだ!

着いたころには空が明るくなっていた.


まだ7時前だったので付近を散策.


ヒメニシキキマワリモドキPseudonautes purpurivittatusだ.残念ながら奄美の固有種ではないが,どんなところを叩いても落ちてくる最普通種.


近くにあったクワ(シマグワかも)に食痕があったので,ネリネリと見ていると,

お,オキナワクワカミキリApriona nobuoi Breuning et Ohbayashi, 1966だ!これは初採集.珍しくはないが…….


さらに,誰かが隠れている.


キボシカミキリ奄美亜種Psacothea hilaris maculata Breuning, 1954だ!これも初……のはず.


そこそこいるようだ…….


このように,トカラギャップを超えると,本土とは一気に種構成がガラリと変わり,楽しい.


上空には黒くてデカいモノがびゅんびゅん飛んでいるので,ネットインしてみる.

リュウキュウツヤハナムグリ奄美亜種Protaetia pryeri oschimanaだった.バナナトラップをかけるとうんざりするほど付くようだけど.今回はバナナトラップはかけないので謹んで採集させていただいた.


と,一台の車が通りかかった.前々から採集地でたびたびお会いするKBさんだった.どうやら,吹き上げポイントはもう少し先らしい.まあ,少しカミキリが採れたからいいか!


つうわけでちょちょいと移動し,本当の場所に到着.

KBさん含めて2名の方がすでにいらっしゃった.


はしっこのしょぼい場所に陣取り,カミキリの飛来を待つ.


…….


しかし,時間が早いのかまだまだ飛ばないようだ.しょうがないので付近をルッキング.

ハナアブ

アヤムネスジタマムシChrysodema lewisii E.Saunders, 1873.南方系の種だが,残念ながら初ではない.


おっと,そろそろ時間かな.吹き上げエリアに陣取る.


人は多い.


しばらくした頃だろうか,隣にいた人が,「あああ,飛んだ!!」と叫んで虫を追いかけていった.

その虫を見てみると,,,なんだありゃ?カミキリか?めちゃめちゃアメバチにそっくりだ.


「逃げられた……」と肩を落としてその人が帰ってきたので,「今のがヤツなんですか?」と聞いてみた.


「そうだよ」と返ってきた.うひゃ〜,あれがヤツか…….見つけられても気づかないかもしれない.ハチだと思っても網に入れるしか…….



おおお,さっきの影にそっくりなやつが目の前にあらわれたぞ!ちょうどよく,向かい風に阻まれて動きがゆっくりになっていた.


落ち着いてネットを振る.入った!


ヤツでありますように…….


よっしゃぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!アマミホソコバネカミキリNecydalis (Necydalis) moriyai Kusama, 1970だ!!!!そう,これが今回一番求めていたカミキリなのです…….

ハチにしか見えない奇妙なフォルム,いい…….


このNecydalis属のカミキリは非常に人気が高いグループで,全種制覇を目標に掲げている虫屋も多い.この種は,種小名からモリヤイなんて呼ばれている.


ぼくが虫を始めたての頃は,「ネキダリスなんて細っこくてどこがいいのかわからん」なんて思っていたけど,いやはや実物を見ると非常にいい虫だ.結構ガッチリとしていて,ホレボレとしてしまった.


それからそこそこの数が飛んだものの,空振りを連発し,わずか2頭を追加しただけで終わってしまった…….


さて,午後はビーティングをしまくることとしよう.


島のレンタカーで林道をくまなく走り回り,よさげな物件があったら走る.


んが,どこを叩いても虫が来ない…….


虫,少ねえなあ.


マツの土場を見つけたが,


羽化不全のサツマウバタマムシChalcophora yunnana abnormalis Miwa et Chujo, 1935を見つけただけだった…….


何かが飛んだので手で叩き落とすと,

ヨツスジトラカミキリChlorophorus quiquefasciatus (Castelnau et, Gory, 1841)だった…….


やっぱり虫が少ない.


適当な林道をデケデケと歩いていると,菌糸がまわったところにゴミダマがいた.


カスザブチビコブスジゴミムシダマシByrsax kaszabiだった.初採集だ.やった!



やがて日が傾いてきた.そろそろナイターをしよう.

いろいろなカミキリが採れているという場所へゴー.

ペッペッとライトを設営して,ホイ準備完了!


飛んでこい!!!


が,駄コガネしか飛んでこない…….あまりにひどいので,話を聞くと,どうやらカミキリが飛んでくるのはもっと遅い時間帯らしい.なんだぁ.

落ち着いて虫を探す.

アマミビロウドカミキリAcalolepta amamiana amamiana (Hayashi,1962)かな?あまり自信がない…….ライトとは無関係のところに止まっていた.


その他,オオシマアオドウガネやらアオドウガネやらウエノコブスジコガネやら.

カミキリのゴールデンタイムまで夜見回りをすることにした.

アマミイシカワガエルOdorrana splendidaを見つけた.国内で一番美しいといわれているカエルのひとつ.


マルモンコロギスProsopogryllacris okadai Ichikawa, 2001かな?自信なし.


アマミハナサキガエルOdorrana amamiensis?さらに自信がない.



ゴミダマは見つからなかった…….


しばらくして白布に戻ると,カミキリが止まっていた.

オオシマゴマダラカミキリAnoplophora oshimana (Fairmaire,1895)だった.初.

さて,これからがゴールデンタイムだ!!というところで,猛烈な土砂降り…….


うっひょ〜い…….



採集にならなかったので寝た.


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7/4(2日目)


朝,目を覚ます.ヤベッ!寝坊した!

携帯のアラームをかけていたが,どうやら電池切れになり鳴らなかった模様.


う〜〜ん,今日はこれからどうしようかな…….


昨日の吹き上げポイントには,今から行ったところで人多すぎて場所は取れないだろうし…….


かなり悩んだ末,別の吹き上げポイントに行くことに.


天気はよくない…….


雨も降っている.


めげずに虫を待っていると,人が歩いてきた.話してみると,なんと,ぼくの部活のOBの方だった…….せまい世界だ.

よろしくお願いします,と頭を下げると,目の前をデカいモリヤイが飛んでいった.


当然だが採れなかった…….


虫はこれくらいで,何も飛ばなかった.


この日は宿に泊まる手はずを整えていたので,いったん町におりることにした.

林道を走らせていると,S字カーブのところで車がスリップしてしまった.急ブレーキをかけるも止まらず,道のわきのヤブをなぎ倒しながらもドンドン進み,最終的に崖に生えていた木にぶつかって止まった…….

あっちゃ〜.


ただ,車のほうにほとんど傷はついていなかった.くそ,今日は運が悪い.

バックさせるが,下がぬかるみになっていて,タイヤが空転してしまい進まない…….


結局JAFのお世話になった.


町におりていろいろ用事を済ませると,かなりの時間が経っていた.日暮れまで2,3時間しかない.

ビーティングをしたが,今日もさっぱり落ちてこなかった…….


さて,ライトポイントに向かおう.


しかし,雨が激しくなってきた…….


この雨は止まず,ライトを点灯させたがろくなものが飛んでこなかった.


ハブはいたけどね…….



後編に続く.