エナネよヒューマン無責任
キイロチビゴミムシダマシ属Enaneaは、現在既知種4種が知られ、全部ド珍品というぶっ飛んだ属である。
「ぼくのかんがえたさいきょうのぞく」をそのままで行く属と言い換えててもいい。なにより、寸詰まりの体型に半透明の体色、どっかから持ってきたような頭部のツノが素晴らしい。
しかし残念ながらド珍品であるから、自分には到底縁のない虫だとばかり思っていた。
いやしかしそうではないんですね。冬季にかなり水分多めの材中に集団越冬していると知られてからは、かなりまとまった数が採られ、ルイスキイロチビ(本属としては唯一本土に産する)なんかは大暴落もいいとこである。というかまとまった数が採れているのはルイスだけっぽいが、まあ他種も同様にして採れるだろう。オニツノほしいよおおおおお!!!!!
実はルイスは別の方法で採ったことがあるので、今回は近縁のアカチビゴミムシダマシ(これも同様にして採れる)とルイスの追加、さらにさらにあわよくば未記載種を……ということで、Enanea狙いならココ!という有名林道に行ってきた。
同行者は半分だまして連れてきたようなかわいそうな後輩2名。
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高速をひたすらぶっ飛ばして現地着。福岡から宮崎は遠い。
さて、Enaneaは環境の良い照葉樹林にいると思うので、さっそく材を探していく。
こういうとこ。あまり環境良さそうには見えないって?ここはすごいよ。
1時間、2時間と経過していく。かなり採れると聞いていたが……いねえ!!
材は水分多めのびちゃびちゃ、という情報を知っていても、そういう材は無限に転がっているし、狙いを絞り切れない。朽ち方とか、樹種とかもうちょっと詳しく聞いておくんだった……!
ただただ焦るだけでいまだにゼロだ。手ぶらでは帰りたくな〜〜い!!!!
「材……材……」をうわごとにようにぶつぶつつぶやきながら斜面を上り下りしていると、後輩のひとりが近寄ってきて、
「もしかしてこれですか?」
っと聞いてきた。
ああ!それだよ!!!!先越されちゃったよチクショウ!!!!!現地ではアカチビかな?とかふざけたことを抜かしていたがどうみてもルイスです本当に(
見ると、材はブロック状に崩れる赤枯れであり、切り株だった。そして水分多めではない。
血眼になってその切り株をぶっ壊すが、そいつ……じゃなかった、その後輩がもう一つ追加を出して終わり。
うーん、なんか思ってたのと違うぞ。
必死こいてこの周りを探すが、追加出ずに終わり。
なんだかなぁっと思って、ちょっと場所を変えてまた探索。
すると例のやつ……じゃなかったさっきの後輩が、
「いっぱい出ましたよ!」って材の破片をうわああああああやめろやめr
おれにもよこせええええええ!!!!!!!
あああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!
うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!1
実際は「うひょっ」って言いましたけどね。
これも現地では「アカチビだな」とか言ってたけどどうみても(
これがルイスキイロチビゴミムシダマシEnanea testaceaだ!!!!
真面目な話をすると材はコルリが出てくるくらいの朽ち方と水分量で、やっぱり切り株であった。この材からは10以上出た。
こうなってくるともうコツをつかんだも同然で、いくつか追加を採ることができた。
もう誰も止められないぜ!!!って感じで調子に乗っていたので、もう一人の後輩が「これですか?」って持ってきたのを、「そうだけど、それが何?」みたいな感じでそっけない対応をしてしまった。ごめん。
さて、アカチビルイスキイロチビを採ることができたので、さらなる別のターゲットを探したいなあ……と思っていると、良さげなアカマツ材を発見。
アカマツ、冬、カミキリ。これはあいつですな。
皮をベリベリ。
ああ!!!!!やっぱりRhhagiumはイイ虫だなあ……ホンドニセハイイロゴミムシダマシなんじゃないのか?ほんとは。
そこに後輩2人がやってきて「何探してるんですか?」と訊いてきた。
ぼく「ラギウム」
後輩「ふーん(ばかにしてる)」
ぼく「そこの材からはまだ出るんじゃない?」
後輩「え、出したんですか!?」
あたりまえだ!!!!なめないでいただきたい(Enaneaでは先を越された癖に)
必死こいて探す後輩たち。なお採れなかった模様。すまんな。
一応言っておくと、九州のラギウムは本州みたくあほみたいにいるもんではないので貴重なんですよ。……珍でもないけど。
そうしているうちに日暮れになったので採集終了。
日々デスクワーク続きだとやっぱりフィールドが恋しくなるなあ。次週も採集に行きたくなってしまった。