ごみだまろぐ

甲虫屋のネガティブ日記

かみきりろぐ

タテジマカミキリAulaconotus pachypezoides Thomson, 1864 というカミキリムシがいる。今回はそれ狙い&リハビリを兼ねて、福岡県糸島市まで赴いた。


バイクにしろ車にしろ、ちゃんとした足があると、こうした"ミーハー虫"が狙いやすい。採集のたびにレンタカーを借りているのでは、お金がいくらあっても足りない(もちろんレンタカーを利用したほうがいい場合もある)。本当に行かなくてはいけない採集にしか行けず、今回のような"お気楽採集"には少々もったいないと感じてしまうからだ。


ここで今回の目標について軽く説明したいと思う。もうご存知の方がほとんどだろうが、タテジマカミキリとは珍しく成虫で野外越冬するというカミキリムシだ。有名な寄主植物はカクレミノで、この枝にがっしりとしがみついたまま越冬するという。

雪国育ちの私としてはちょっと信じ難い。だからこそ、ちょっと憧れでもあった。幸いにも普通種のようなので自分でも採れるだろう。たぶん。


まあそんなこんなで糸島市をさまよい、軽トラしか入れないようなダートをがががっと走って雰囲気がある山にたどり着いた。



まずはカクレミノを探さないと始まらない。植物の同定は苦手というかさっぱりだが、カクレミノは葉の形が独特なのですぐ分かるだろう。


こんな環境の林内に突っ込んでいく。

探すこと5分。
ほら、ほら、見つかった。

これです。

こんな形の葉っぱでやんす。


分かりやすいでしょう。


しかし、この木にはタテジマはいなかった……。食痕らしきものもない。

この木の近くにもう一本生えていたのだがそこにもおらず。
そして、カクレミノはぱったりと見つからなくなってしまった……。


えっそりゃだめでしょ!
もう山の斜面を行ったり来たりして血眼になって探したが、カクレミノは思うように見つからなかった。1時間ほど集中して探しても一桁くらい。中には食痕があったものも見られたが、ちょっと古すぎる気がした。

はあーあ見つかんねえ。そう思って改めてあたりを見渡してみると樹皮が浮いた立ち枯れがたくさんあった。

ちょっとくらいなら……いいよね……

ヒゲブトハムシダマシLuprops orientalis
いわゆるゲブダマ。

あとはユミアシしか出なかった。
だめだこりゃ。


結局ここで粘っても採れないだろう!と判断して、山を下りた。
バイクのほうへ向かうと、来た時にはなかった軽トラ2台が。しかも、迷彩服に包まれたおっちゃんたちがなにやら悪だくみをしているようだった。

挨拶もそこそこ話をすると、どうやらイノシシを撃ちに来たようだった。悪だくみじゃなかった。

いやーしかし、引き上げるのがもう少し遅れたらイノシシと間違われて撃たれたかもしれなかった。ちょっとヒヤリとした。


ダートをごごごごっと駆け下りて、別のポイントを探すことに。カクレミノが少なかったのは、日当たりのせいか?じゃあ逆の方角の斜面で探すかーと思い、砂利道をざーっと通って山の反対側に来た。

今度はこんな感じの環境。

手前側が竹林で、奥が照葉樹林になっているようだったので、仕方なく竹林を突っ切ることにした。

山の斜面が思いのほか急だったので、汗だくになってしまった……。


と、ここは当たりだったようで、先ほどとは比べ物にならないほどたくさんのカクレミノが生えていた(さっきの推測が当たっているのかは知らない。たぶん関係ないだろう)。

一本一本ずつ入念に探していくが、ここでもタテジマはなかなか見つからない……。前の場所の倍以上の数のカクレミノを見ていったが、食痕がある木は一本もなかった。


ここはハズレか?まわりが竹林なのが良くないのかなあ。


ここもダメか……そう思って改めてあたりを見渡すと樹皮が浮いた立ち枯れが……むむ、これデジャヴだ。

あっごめんなさい!!


場所を変えるか……そう思って山から出る道を探していると、一本のカクレミノが目に付いた。

ちょっと細すぎるんだよなあ……と思った瞬間、写真で見たあの影がボンヤリと輪郭を形作った。


フラッシュを焚いたら明るすぎるし、焚かないと手ブレで何がなんだか分からない写真になったので、苦渋の判断のすえこちらを載せました。



やったータテジマカミキリだー。ひゃっほーい。


情けない結果で終わることが無くなってよかった……本当によかった……。
嬉しさと安堵が入り混じる中での一服。至福のときだった。


追加を狙おうと思ったが、途中でバイク屋に用事があることを思い出して帰ることにした。

まー採れてよかったです。これだから採集はやめられないね。


帰りにおいしいラーメン屋に寄って、今回の採集は無事終わった。



採集結果:

タテジマカミキリ

以上